[password Ionice]

 私は好奇心に勝つことができなかった。

Lording...



 [IH-Incect Humanは、死亡もしくは仮死状態になった人間の脳に昆虫の脳を移植し、特殊な薬品と技術を用いて蘇生させた結果、新たに誕生した生物である。実験回数4259回 成功確率13% 生存者554名 死亡者3705名。被験者はその95%が記憶を失い、特殊能力を身につける。身体にも多くの点で変化が見られ羽の発生、食嗜好の極端な変化はその最たるものである。生物兵器レベルB。強化人間に近い能力を持ち、よりローコストで改良が可能。兵器化するにあたっては死体にも適用できる点が大いに評価でき、実用化にこぎつければ軍兵士の死亡率は大幅に下がるものと思われる。しかし死亡してからすぐに処置を施さなければならず、技術面からも凡用化は難しい。この計画は現在観察中であり、観察フィールドは太平洋南緯……]



 私の後頭部に固い何かがあてられている。
「……ビクトリア君、大いに残念だよ」
 嘲笑を含んだ上司の声。私の指は震えて、キーが押せなくなった。
「ユーグリッド君といい、君といい、どうして若い科学者は野心に犯され、こうも愚かな真似をするのかね?」
「博士、あなたは……いつからこんなことをなさるようになったんですか?」
 喉が動かない。声がか細い。
「さあな。戦争を終わらせるためか、犠牲者を減らすためか……娘が生まれてからこの研究を続けとるよ」
「娘さんのためにも、今すぐこんな計画は中止すべきです」
「君のような人間に何がわかるのかね?」
 かちり、と後ろで音がした。
「君みたいに若くて美しい科学者は惜しい。だが安心したまえ」
 黒い画面に浮き出るデジタル文字。
「君は消された」
 熱い衝撃。何かが頭を貫いた。
 デジタル文字に  ひびが    入った。

Click
Copyright © 2009 桔梗鈴