ああ、このダリアこの前来たときも見たな、と玄関の枯れたダリアを見て男は思った。終わりにしようと決めた。一人住まいのマンションで女の愛はこのダリアのように茶色く乾ききっている。
もうこないで。あなた私を愛してない。一緒にいると疲れるの。合わないわ。男が本格的に会いに行くのをさぼって何日も自由を謳歌していると携帯にメールが届く。寂しい。エッチ抜きで会えない? 会いに行くととりあえずセックスに持ち込んで性欲を満たしてから帰る。
もう少し性欲処理用にちびちび喰えるかと思ったが、枯れたダリアを見た瞬間に幻滅が性欲を僅かに超えた。部屋に上がりこむと女はベッドで寝ていた。部屋着用のシャツにぴったりのデニムを穿いて、男の姿を見つけるとくたびれた調子で笑う。
「来てくれたんだ」
「ああ、もういいよ。寝てていい」
もう一言も喋るな。返事をするのも面倒臭い。
枯れたダリアに水はやらない。男は性欲のため、女は自分は寂しくないという見栄のため。いくら付き合う相手を変えても最後に見えるのは不毛の世界だ。男はしおれた花から間引いて捨てる。いっそ完全に乾いていたなら握りつぶしても絵になるのに。
「玄関のダリア、枯れてるから新しいの買ってきて生けてやるよ」
「え? 枯れてる?」
「ああ。新鮮な花を買ってきてやる。それでお前とは終わり」
「ダリア」 / 七夕企画「花ショート」より。銀縁眼鏡拍手御礼SS